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爺さんたちが生きてた頃にゃ、爺さんたちは知っていた
かく生きるべきか かく在るべきか
おれら孫たち 全部忘れた
泳ぎ回る 泳ぎつく果ても知らないで。 

爺さんたち 塀をうち建てた
家畜や家禽を がんがん増やした
爺さんたちは 技師でもあった
思慮深く 誇り高き その面構え。

おれたちは おれたちの孫の爺さん
著しく 前進したもんだ
信ずるものは科学のみ
ただ科学ってやつはいつも嘘ばかりついてるけどな。

忌々しい科学は 嘘ばかり、
人間に不死はありえないだなんて。
嘘ばっかり!保証してもいいよ、
科学なんて すぐ滅びちまうさ。


何故なら 人間にあるのは
科学じゃなくて不死だからさ

おれはそんな徴しをみたんだ。
おれはそんなお告げを聞いた。
生きた末に 墓へドスン!てだけなら

人間にも 魂にも
世界は 随分 さびしいじゃないか。

 

(1937年9月)